2021年1月15日に弊社主催で実質株主判明調査について学べるセミナーを開催しました。
第1回[株主判明調査の概要]
第2回[IR活動での実質株主判明調査の活用法]
第3回は市川氏にSR活動での実質株主判明調査の活用法についてお話頂いた内容をお届けします。

SR活動で1番重要なのは票読みと説明する市川氏。株主総会議案の票読みの例を出しながら、アクティビストの対応の必要性や実質株主判明調査が有効になる議案の条件など、市川氏の楽天時代の経験を交えながらお伝えします。

SR活動で一番重要なのは票読み。そのために各議案に対して議決権行使シミュレーションをしっかり実施すること


※市川氏スライドより
上の表は実際のイメージとして見ていただきたいのですが、株主に海外ロングオンリーA・B・C・Dという企業があるとします。大企業は独自で議決権行使ガイドラインをもってますが、それを見ると楽天の場合には1円ストックオプションがあり、それが特別決議でした。それをふまえて株式報酬のガイドラインを確認すると「ここは多分OK」「ここは多分NO」「ここはISS通り」「ここはグラスルイスどおり」と予測できるようになり、さらにISSの基準をみると「多分OK」「グラスルイスはNOかもしれない」など、1%未満や楽天の場合はそこまで見る必要はなかったのですが、だいたいの行使率の予測等に活用していました。
国内のロングオンリーについては、GPIFやアセットオーナーの基準を参照していますが、現在は大抵独自で議決権行使ガイドラインを作成しwebで確認することができます。そのガイドラインを見ながら「多分OK」「多分NO」と判断したり、微妙なところは電話やメールで確認しながら共有していました。個人については行使率が高くないので前年の行使率に参考にしながら入れてましたね。トータルの行使を例えば10万として予想行使が6万2600だとすると賛成率は71%になるという予想行使率を出していました。普通決議だと余裕ですが、特別決議だとギリギリなので上記のようなことををしっかりやっていました。これは東証一部にあがってからの活用方法です。

議案は年内に作成(12月決算の場合)、投資家とのコミュニケーションは余裕を持って事前に動き出すことが重要

続いてスケジュール感を紹介します。楽天の例になりますが、12月決算の場合、株主統計表が1月中旬頃に出てきます。実質株主判明調査を行う場合は、株主統計表についている免税搭載申請書を参考にしています。信託口の分析もしますので、免税搭載申請書が出てきてから業者さんに実質株主判明調査をお願いすれば早くて一月末、もしくは2月初頭ぐらいに実質株主が判明します。
さらにこの間に議案の数の確定や議案そのものも2月の中旬から下旬ぐらいに決定しなくてはならないので招集通知を総会の2週間前だとギリギリなので3週間か4週間前には送るとすると実質的な投資家側での行使期限は実は総会の1週間ぐらい前なになることが分かると思います。行使期限は前日と思った方は電子行使を入れている会社かと思うのですが、電子行使ICJプラットフォームに会社側が入れていても投資家側が使えない・使わない場合があるので結局総会の1週間前に決める必要がでてきてしまいます。
3月総会だと数100社後半ですけど6月総会だと2000社ぐらいあり、その間に多くの議案がくるのでSRで議案を説明しようとしても、この時期にしっかりとしたコミュニケーションをするのは非常に難しいと理解しておいた方が良いと思います。

※市川氏スライドより
そして、票読みはこの期間に実施するのですが、先程申し上げたようにコミュニケーションはこ期間だけでは難しいので議案は年内に作成します。11月か12月に大きい株主の行使基準を確認し、必要時ミーティングもします。必要時というのは、大きいところでもESGチームは数人しかいないので、数人で200社から500社を対応することになります。
これは6月に総会があり、その後投資家のクライアントに説明をしに行くのでだいたい秋まで忙しいことが分かると思います。その後にようやく新しいガイドラインが出てきて、そのガイドラインについて企業に話すタイミングになります。以上のことを考慮すると株主統計表が来て、実質株主が判明してから期末の総会に間に合わせるのは難しいので、事前に動き出すことが必要です。

アクティビストを敬遠せずにしっかりコミュニケーションを取ることが大事

次はアクティビスト対応についてお話します。先程のお話から期末に実質株主判明調査でアクティビストがいることがわかっても間に合わないとので、もっと前から実施する必要があることがご理解いただけたかと思います。ただアクティビスト対応については、実質株主判明調査を実施すればいい訳ではなく、ご存知のように株主提案が通るか否かは他の株主が賛成するかによります。去年話題になったアクティビスト案件でも決め手となったのは、他のロングオンリーで優良投資家と言われている人たちが全員、アクティビストのほうが正しいと思ったからです。
例えば、オアシスは国内外の機関投資家への説明を積極的に実施しています。割と優良なESG担当者でも、当然のようにオアシスや様々なアクティビストと日々コミュニケーションをしています。つまり企業側もしっかり投資家に自社の方針を、よくありがちですが事業ポートフォリオで非効率なものをやめませんか、あるいは株主還元などについて理解してもらう必要があります。株主提案そのものは、300個または1%の保有でできますので、アクティビストが持っているかどうかよりも、投資家の考えに関してフィードバックを日々もらうことが大事だと私は考えます。
また、アクティビストが他の投資家と対話してるということは、アクティビストの意思や意図をちゃんと理解しないで機関投資家と話しても齟齬が生まれる可能性があるので、敬遠する前にアクティビストの話を聞くべきだと思います。

賛成率が低い可能性の議案がある企業は、実質株主判明調査が必要

株主提案は、アクティビスト以外の普通の法人株主提案も含んでいます。次の表は株主提案に対して機関投資家がどの程度賛成したかというデータです。

※市川氏スライドより
みずほ証券のキクチストラテジストがレポートを定期的に出されています。2020年の総会ではフィデリティ投信が一番多く25%、件数にすると50件の株主側に議案に賛成しているので、結構あることがわかります。そしてもう1つ見て頂きたいのは、会社提案に反対するのも割りと増えています。1番多いのが三菱UFG信託銀行で30%を越えています。会社提案に3割程度反対があることを念頭に置いておくといいと思います。

※市川氏スライドより
このように賛成率が低い可能性の議案がある企業は、やはり実質株主判明調査は必要かと思います。より理解してもらうために、さらに細かくブレイクダウンしてお話していきます。株主のうち機関投資家の比率が高い企業は、どんな人が株主なのかしっかりフォローすることが大事です。それから特別決議が議案に含まれている、または普通決議でも買収防衛策のよに賛成の得られにくい議案がある場合は注意した方がいいと思います。
さらに、自社というより株主提案がある可能性で言うとアクティビストの標的になりやすい条件というのが5つあります。1.独立性の低い取締役会構成、2.低いROE・低いPBR、3.低い総株主還元性向、4.親子上場、5.資本効率の極端に低い高い事業、もしくは資産を内包している事業ポートフォリオ問題です。その他でいうと、事業ではないですがポートフォリオで政策保有株式や不動産で売った方がいいのではないかというところもあります。他の機関投資家が問題視している部分をアクティビストも議論にあげたがる事を理解してくと良いと思います。

※市川氏スライドより
今回は、SR活動における実質株主判明調査の有効活用法についてご紹介いただきました。質疑応答では、アクティビストからの面談依頼があった場合の対応についても、IR・SR担当者は会ってお話することを推奨された市川氏。その際の注意事項として、アクティビストは詳細に調査しているので、普通の機関投資家より鋭い視点で質問がくること、開示できない内容についてはフェアディスクロージャーを守って明確に非公開であることを伝えること、そして何より他の機関投資家とも情報交換しているので回答に一貫性があることが重要だとお話してくださいました。次回は、実質株主判明調査取得後の、投資家との対話(エンゲージメント)についてお届けします。