2021年2月19日に弊社主催でSR訪問で重要な5W1Hについて学べるセミナーを開催しました。

 
第3回は、藤木氏と市川氏によるSR訪問の基本となる「When」「Who」についてお話いただいた対談内容をお伝えします。

When: 議決権行使ガイドライン更新前の夏以降が狙い目

市川氏
それでは、SR訪問にいつ行ったらいいのか、いつ会うのがいいのか、どのような機会があったらいいのかという「When」について進みます。先ほど、例年だと2月から5月がSR訪問のピークとお話をいただきましたが、議案が出てからではやや遅いと思うので、具体的な時期をお伺いします。
藤木氏
SR関連の対話は2月から5月までに行うことが多いです。ただし、特に弊社の議決権行使方針に抵触する可能性がある場合は、なるべく早い時期にご相談いただきたいと思っています。なぜなら、議案が完全に固まった状態で議論すると、対応の余地が限られてしまうためです。対話を通じて得られた定性情報は議決権行使の際に考慮しますが、繰り返しとなりますが、できれば議案が固まる前にご相談いただくのが良いかと思います。なお、弊社では、議決権行使のガイドラインの改定は年明けに行うことが多いです。(2021年は2月開示)
市川氏
今年はコロナの影響で年を跨いでいますが、議決権行使ガイドラインの更新がある場合には、早い企業・機関投資家では秋頃には出てきますよね。議決権行使ガイドラインを確認した上で、相談した方がいいと思ったら、議案を作る前に戦略的な背景の説明を含めて訪問することが大事ということですね。
藤木氏
はい。それ以外にも中期経営計画を公表いただいたタイミングでご説明いただくのも、ありがたいです。夏以降は対話件数が比較的限定的なので、じっくりとお話をお伺いできますし、大変助かります。
市川氏
夏以降は狙い目ですよね。
藤木氏
「統合報告書へのフィードバックいただけますか」という対話も近年増えています。統合報告書について議論することで、現在の課題意識や方向感が把握できるようになります。弊社としても、夏頃を含めて年間を通じて対話をしっかり実施させていただきたいと考えているので、有意義な時間になります。
市川氏
少しテクニカルな話になりますが、決まっていない議案の時に、みなさんどのような質問方法でご相談に伺ってますか。私が楽天のIRにいた時には、毎年ストックオプションの議案があったので「去年の議案で反対された理由は何ですか」「どうしたら賛成になりますか」という形で質問していました。3月が総会だったので、秋頃に議決権行使ガイドラインの変更の有無を株主の担当者に聞いて、「去年の議案はこんな感じになりますがどうですか」あるいは「このように変更を検討していますがどうですか」といった質問をしていました。この話をある方にしたところ「新しい議案だと、どうしたらいいんですかね」と聞かれたことがありました。私としては「他社でこんなことがあるんですけど、どう思いますか」と伺うのがいいのかなと考えています。もちろん重要事実にならない範囲は気をつけています。
藤木氏
おっしゃるように「現在、変更を検討しているがどう思いますか」や、「他社の報酬制度の導入事例について考えを聞かせて下さい」というご質問をいただくことはよくあります。
市川氏
他社の事例を引き合いに出しながらですと質問しやすいですよね。そうすると、議案が固まる手前から相談に行けますよね。藤木さんがおっしゃったように「統合報告書にこんなことを書こうと考えていますがどうですか」という質問方法は活用できるかと思います。
藤木氏
はい、有益だと思います。
市川氏
対話の要請について伺いたいのですが、年間440件の内、ブラックロックさんからお話聞かせてくださいといういうケースと、企業側から訪問を希望されるケースはどちらが多いですか?
藤木氏
毎年、定期的にお会いする企業も多いですが、一方で、こちらから特定の課題について対話を要請する件数も多く、また年々増加傾向にあります。さらに、特定の課題について対話を実施する場合は複数回対話をさせていただくことが多いため、対話の頻度も含めて、最も実効性ある対話の在り方を検討しながら対応しているのが実態です。
市川氏
選ぶ基準はありますか。
藤木氏
重要な課題の有無、課題に対する会社側の対応等を総合的に勘案します。例えば、議決権行使の際に課題を認識した場合は、事前に状況の確認や株主総会後のフォローアップという形で進捗状況を確認するために対話を要請します。このような場合は、状況次第では、社外取締役・監査役の意見をお伺いする場合もございます。また、弊社のグループCEO会長のLarry Finkより投資先企業のCEO様に書簡をお送りしているのですが (https://www.blackrock.com/corporate/investor-relations/larry-fink-ceo-letter )、その書簡でテーマに沿って、例えば気候変動問題への対応など、経営に大きな影響を及ぼすと考えあれる場合は、こちらから対話を要請します。

Who: テーマや問題の大小に合わせて参加するメンバーを決定していく

市川氏
先程、社外取締役の話もありましたので「Who」に進みたいと思うのですが、その前にブラックロックさんのスチュワードシップチームは何人いらっしゃるのですか。
藤木氏
現在、日本では8名います。セクター担当制を導入しており、業種ごとに主担当を決め、エンゲージメント及び議決権行使を担当します。ただし、複数名でお話をお伺いすることでセクターによる偏りを極力避ける、あるいは多面的な理解を深める努力をしております。
市川氏
では企業側ですが、誰が対話の席に参加するのが妥当なのか、悩むという声をよく聞きます。経営戦略と財務情報であればCFOやIR担当者が対応できると思いますが、例えば、1回のミーティングで複数の案件を話すことがある時は参加メンバーに悩みますよね。ESGのG(ガバナンス)は、ある程度IR担当者とSR担当者で対応できますが、EとSは別のチームが対応する必要があったりしますよね。こういった場合、どのようなメンバーの組み合わせで会うことが多いでしょうか。
藤木氏
IR担当者とサスティナビリティチームが両方参加いただくことも増えています。また、これらの分野を統括されている担当役員とお話する機会も多いです。一方で、取締役会の議論をきちんと把握したIR担当者とSR担当者が経営を代表して、お答えいただくこともあります。
市川氏
IRチームの部長とSRチームの部長クラスと、サスティナビリティチームのメンバー、もしくはそのうちの2人である程度カバーできる場合には役員は不参加の場合もあるし、問題が大きい場合は役員が参加するケースが多いということですね。
藤木氏
そうですね。
市川氏
社外取締役はどのような場合に参加されますか。
藤木氏
重要な経営課題が存在する場合、あるいは株主提案や買収関連事案、不祥事等が発生している場合など経営に対する評価が問われるケースなどの場合は、お話をお伺いすると非常に参考になることが多いです。
 
今回は、SR訪問の「When」「Who」についてお伺いしました。テーマや問題、そして議案に合わせて、適切に対話の時期や参加者を決めることが効果的なようですね。
次回は、今での内容を踏まえた上で、どうすれば効果的なSR訪問にできるか「how」についてお届けします。