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セミナーレポート

「やる?やらない?実質株主判明調査」セミナーレポート Vol.2 IR活動での実質株主判明調査の活用法

2021年1月15日に弊社主催で実質株主判明調査について学べるセミナーを開催しました。
第1回[株主判明調査の概要]
https://msetsu.com/seminar/2058?post_date=20210125082303

第2回は実質株主判明調査の基本を把握した上で、市川氏にIR活動での活用法についてお話いただいた内容をお届けします。

実質株主判明調査を活用する条件は、担当者の考え方や会社の体勢などにも関わると話してくださった市川氏。今回は有効活用ケースやうまく活用できなかったケースなど、具体例も交えながらIR活動における実質株主判明調査の活用方法についてお伝えしていきます。

重要なのはどんな機関投資家に株を持ってほしいかを考えて順位をつけること

IR活動では、投資家ターゲティング、そして成果測定で有効活用することができます。実際に楽天で実施していた方法を説明します。まずは株主の上位から順に並べていきます。重要なのは、まずどんな機関投資家に株を持ってほしいかを思案する事です。経営者と目線が揃っていて長期的に自社の経営をしっかり観察してくれる、かつお金を持っているところがいいですよね。さらには自社の事業のことをよくわかってる事も重要です。

そして同業他社も知っていることは業界全体の知見があることになるので大事です。このような観点で視野を広げていき、CEOが定期的に面談、CFOが定期的に面談という線引きを決めていました。また、役員が定期的に面談するだけでなくロードショーで優先的にお声がけしたり、M&Aや決算などで大きな動きがあった時は能動的に連絡して電話会議をセットするために使っていました。


※市川氏スライドより

実質株主判明調査を有効活用している東証一部企業の事例

それではここからいくつか企業の活用事例を紹介します。まず有効活用ケースからご覧ください。東証一部電子機器メーカーのIRの現役の方に伺いました。海外株主がある時期から増加したため、その時から大きな増減を確認するために実質株主判明調査を使っているそうです。増加した時、あるいは減少時に理由を聞いたり、増えてきたタイミングで社長に会ってもらうことで買いに繋げたりとIR活動には欠かせないぐらい活用されているようです。

2つ目はIRで有名な製薬会社です。データベースのなかで保有数推移や面談履歴等を入れているのですが、買った時期が分かるということは推定取得株価も把握できる、よってこの内容もデータベース化しているそうです。投資家と対話する時に、データベース化した内容を元に含み損益、いつ頃購入したのか、グロース運用やバリュー運用といった投資スタイルの把握などを念頭に置くことができるというお話を伺い、私自身も非常に参考になりました。

3つ目の事例は東証一部のインターネット業界で時価総額が大きい有名な会社です。継続的に実質株主判明調査をやっているとグロース投資家が多い時期とバリュー投資家が多い時期があり、それは株式市場の期待・評価と認識として使っていたそうです。


※市川氏スライドより

目新しい情報を見いだせなかった事例

ここからは、あまり活用しきれなかったケースについて紹介します。1つ目は私自身のケース、楽天です。今は楽天は東証一部ですけど15年前に私が入社した時はジャスダックでした。前職の経験もあって実質株主判明調査を実践していた2006年のことです。2006年はライブドアショックがあったので、ヘッジファンドだらけの時代でした。

株主名簿を見て実質株主判明調査を実施すると何社かはよく知っているロングオンリーの投資家さんがいらっしゃるんですけど、あとはヘッジファンドばかりで期末に実施して2か月後に見てもこの人(ヘッジファンド)たち全部株を売っている予想がついていたのでうまくIR活動に使えなかった経験があります。SRという観点でも2006年はほぼ普通決議しかなく、創業者が半数近く株を保有していたのであまり意味がありませんでした。この時は実質株主判明調査にかける意義を見いだせずに、その後数年間は実施しませんでした。

2つ目は同様のケースで、マザーズでソフトウェアの事業で現在伸びてる企業です。実質株主判明調査を実施されたけど結果として新しい情報がなくIR活動に使えないと判断してしばらく実施しないとのことでした。

3つ目は、さきほど有効活用できていると紹介した東証一部のインターネット業界の企業が、一部で活用がうまくいかなかったケースです。実質株主判明調査を2社並行して実施した事例です。9割までは同じなのに残り1割には差があったので、この差を調べるために投資家さんと直接御伺いしたものの、結局その差の要因がわからなかったそうです。実質株主判明調査をしても全てがわかるわけではないということを理解したそうです。ヘッジファンドはヒアリングに回答しないことこともあるので100%把握することは難しいことが分かる事例です。


※市川氏スライドより

最後に公開情報をフル活用されている、最近東証一部に最近昇格した株式会社SHIFT(社名公開許可承諾済)について紹介します。マザーズの時に中小型株のファンドマネージャーにお会いしたい時に、公開情報に基づき中小型ファンドのファンドマネージャーのリストを自作して常に保有有無をチェックしていたそうです。公開情報でわかる範囲もありますが、信託口等の分析を実施したり、不明点は直接投資家に確認ししながらかなり精度の高い実質株主リストを自分達で作成したとのことでした。

単に株主の有無を確認するだけではなく、株主ではない場合は株購入するために必要な事を質問をされて上手く対話に繋げていて非常に感心したのを覚えています。現在は東証一部ですが、株主層が広がったことによって実質株主判明調査実施の有無を検討中とのことでした。


※市川氏スライドより

ポイントは東証一部かどうか

ここまでIR活動における実質株主判明調査の活用方法の実際の事例を紹介しましたが 1つ気がついた方もいらっしゃるかと思います。自社が東証一部かそうじゃないかで実は差があります。日本株の市場は今半分近くがパッシブです。特にTOPIXに連動するインデックスのファンドの割合が大きく、さらにそれは年金になっているケースが結構多いです。

実質株主判明調査であきらかになる年金というのはTOPIX東証一部銘柄に集中しています。つまりこれは東証一部以外の市場の企業については公開情報と実質株主判明調査との差は大きくないことが言えます。

最後に、調査会社によってはマザーズだと調査を推奨しなかったり、ディスカウントで引き受ける会社もありますので1つの目安にしてもらっていいと思います。


※市川氏スライドより

IR活動における実質株主判明調査の活用方法についてご自身の事例も含めながら具体例をご紹介いただきました。最後に、株主がほとんど個人という場合には実質株主判明調査にお金をかけるよりもまず機関投資家に会うことが優先すべきことだと話してくださった市川氏。次回はSR活動での実質株主判明調査のSRの活用についてお届けします。

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